3.トークン発行についてホワイトペーパーを基軸にした分析
本記事は七部構成のうちの第三回です。
まだお読みでない方は下記リンクから第一回へ
DappRadarのトークン$radarは2021年12月15日にSushiSwap上で上場しました。
今まで述べてきた通りエアドロップから始まり、他の通貨と異なりIDOなどの広報もなく、ひっそりとSushiSwap上で取引ができるようになっていました。
ミームのような資金調達もせずに始まった$RADARトークンですが、どのような目的で作られたものなのかを説明していきます。
ホワイトペーパーで述べられているトークンの配分
ホワイトペーパーの中でこのトークンの使い道を大きく四つに分類しています。
Communityとは、DappRadarに貢献した人々にContibute to earn として渡す報酬であり40%が配分されています。この機能は2022年末から行われる予定です。
Initial Airdropという最初のエアドロップが10%となっています。
DAOTreasuryはDappRadarが今後成長していくための戦略において使用される部分であり、24.75%となっています。つまり、ApeSwapへの流動性提供やパートナーシップ協定などで金銭の支払いが生じた際に使用される部分です。
Team&stakeholderはこのトークンを発行するにあたって出資したVCと運営チームメンバー(これから雇うメンバーへの報酬を含む)の取り分であり、25.25%となっています。VCに関しては⑤の記事で後述しますが、株式会社が上場した際の持ち分と比較すると少ないことがわかるでしょう。
RADARトークンの本質はDAO化のためであり、その過程で言い換えれば40%がコミュニティの成長に直結するような報酬つまり改修費であり、24.75%がマネジメント費用とも認識することができます。
これはつまり、明確に認識しづらいものの、「サイトの認知度を向上させたり開発を強化していくために40%相当分を資金調達している」とも言い換えることができます。
この規模で有名なプラットフォームが資金調達をしていたら投資家目線で見ても好材料なのは明白でしょう。
DappRadarは現在でさえ業界トップであるのにもかかわらず、今後3年間でContribute to earn 40%という莫大な資金を成長のために使っていくという事です。
プロジェクトの進捗度を鑑みて、Shareholder&Teamの配付スケジュールが2022年末に変更されました。
変更では、投資家が不信感を募らせないために、運営側のトークン取得を遅らせました。
DAOへの真剣度がここにも表れていると言えるでしょう。
トークンの機能
トークン機能の使い方については以下の記事をご参照ください。
機能ごとに記事を細分化しているまとめページです。
RADARトークンは、投票権としてのガバナンス機能と使用権としてのユーティリティ機能があります。
ユーティリティトークンとしての機能
現在公表されているユーティリティは以下の通りです。
AccessとはDappRadar Proとなることです。$RADARを5000枚保有することで、有料ブログ記事の購読や、エンハンスデータの利用、プロ向けのDiscord、ブログ記事の先読みなど様々な機能を使用できるようになります。また、記事➀でも触れたようにエアドロップの確率が3倍になることもありました。
上記のみだと魅力が少ないと感じた方もいるかもしれません。しかし、DappRadar Proとしての機能自体も投票(ガバナンス機能)で増える可能性があるため、投資家自身たちがDAOの議論で魅力あるものに変えていくことが重要です。このユーティリティは投資誘因の重要な要素であるため、記事➅の懸念点の中で具体的な改善可能性について後述します。
StakingはApeSwapとSushiSwapでETHやBNBと共にプールにロックすることで流動性を提供し報酬を得るというものです。開始当初はAPR(年単利)400%でしたが、10月現在では110%程度まで低下しています。
またガバナンス機能の方で後述しますが、今年の7月から10ヶ月間(10M/月 RADAR、合計100M、1日あたり+333kの計算式)シングルステーキングが可能になっています。業界初のクロスチェーンステーキングであり、BNBチェーン又はETHチェーンという複数のチェーンのウォレットを接続でき、APR(単利年利)132%(2022年10月現在)となっています。
イールドファーミング(記事内で説明)のリスクがあるため、通貨の爆発的な値上がりを期待するならシングルステーキングの方が魅力的ですが、詳しくはステーキング機能の使い方も含めて上記ページよりご覧ください。
Governanceとは、DappRadar DAOの議論に参加して、提案をしたり、投票をできるというものです。先ほどガバナンスとユーティリティを分けて説明しましたが、投票に使用する権利でもあるためユーティリティが包括概念として記載されています。この投票権は言い換えれば議決権になりますが、議決権の行使には$RADARの1枚以上保有が条件です。
また、議案自体の提案に関しましては$RADARが最低10万枚が必要です。
Paymentsとは支払いを$RADARで行うと割引されるというものです。例えば、企業がDapps Storeに広告を掲載したいときに$RADARで支払うことで割引を受けられます。この際に$RADARを介すことで買い圧力を生ませる狙いと思われます。
ユーティリティの展望
DappRadarはマルチチェーンを目指していて、今補足しているチェーン全てにRADARを繋げていく予定です。これにより、どのチェーンにいる人でもDappRadarに接続していくことができるようになります。
発行枚数が100億枚は多すぎるのではないかと運営に尋ねた際には、『マルチチェーンによる分散をした場合1つのチェーンあたり3億枚程しか残らない。もし枚数の過多を今すぐに判断してburnをするのであれば、最初から発行する意味はなかった。』という見解を示していただきました。
DappRadar運営はそれだけマルチチェーンの未来を信じており、burnがもし本当に必要であるならばDAOの議論で行われていくだろうということでした。
次の項で説明しますが、実際にburnに関する投票は既に何度も行われております。
わざわざ発行枚数を100億枚からスタートさせたのは、それだけDappRadarの思い描く未来が壮大であることの裏返しだということが重要です。
全世界にdappsが普及する未来においても、DappRadarがDappsに導く入り口としての地位を保てていたことを想像した時、本当に夢のあるプラットフォームではないでしょうか。
ガバナンストークンとしての機能
シングルステーキングの投票
実はシングルステーキングは本来予定されていなかったものでした。
請求忘れやガス代の高騰に伴って、エアドロップの未請求分が想定より多かったため、このRADARトークンをどのように使用・処分するかという投票が行われました。
具体的には、シングルステーキングを行う場合には賛成、トークンをburnすることで希少価値を上げる場合には反対という投票内容でした。
結果は上記のとおり、コミュニティの99.75%が賛成したため、シングルステーキングが決定しました。
逆に言えば投票によっては今後$RADARがburn(通貨を焼却すること)をして枚数が減り、希少価値が上がる可能性もあるという事です。
(追記:上記以外のステーキングプールV2⇒V3移行案の際にもburnが提案されました。)
投票の分散化について
上記の画像を見て、99.5%が賛成という結果にDAOとして機能しているか疑問に感じるかもしれません。
しかしこの、シングルステーキングの議題に関しては多くのRADAR保有者ほどステーキングによる恩恵が大きいので、ほぼ全会一致で賛成になるのは議題が故と言えるでしょう。
執筆者自身も迷わず賛成に入れております。
初期の投票では56.84%が賛成、43.16%が反対とある程度拮抗できた投票もあります。
DAO化と言いながらも運営がほとんどの議決権を保有するコミュニティが多数である実情に対して、このように投票が拮抗していることはDAOとしての第一歩を歩めていると言えるのではないでしょうか。
ちなみにこの投票回の議題はApeSwapとSushiSwapにおける流動性提供の話であり、投票者が少なかったことも要因かもしれません。
議題が難解で普段よりも投票棄権者が多くいたことや、コミュニティの将来に関わる重大な議題ではあるものの、直近で投資家が儲かるかどうかのような議題ではなかったため関心が低かったことが影響していると考えられます。
ここで注目してほしいのは、そのような投資家心理が投票結果に大きく影響しているということであり、裏を返せば分散化がある程度確保できている証拠であるという事です。
投票はブロックチェーンで署名して刻まれているため誰でも閲覧可能なので見てみると理解が深まります。
大量の議決権を持った人が故意に投票結果をいじることなく、投資家の中でもきちんと意見が分かれていることまで読み取ることができるでしょう。
最近ではあのMakerDAOですら、投票において分散化が全くできていないことを批判されています。
これに対し、DappRadarの投票においては黎明期であるにもかかわらず、きちんとした分散が行われていく可能性があるという事実はとても重要です。
DiscordやForumでの会議を見れば更に、DappRadarがDAO化に向けて真剣に取り組んでいる限られたプロジェクトなのだということが認識できます。
ここまでホワイトペーパーから$RADARの発行目的について説明しました。
DappRadarの思い描く未来像に将来性を感じたのではないでしょうか。
この将来性に満ちている業界でDappRadarが現在の首位という地位を維持できるかが問題となります。
そのため次の記事では競合を分析をしていきます。
続きは下記から
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